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コンタクトについて

半年前から私のクリニックに通ってきているIさん(仮名)は、50代半ばの銀行マンです。 仕事はコンピューター関連セクションの管理職。
会社の定期健診で「眼圧が高い。このまま放っておけば失明する可能性もある」と言われ、「心配で食事も喉をとおりません。夜も寝られません」と必死の面持ちで来院しました。 眼圧は259ありましたが、眼底検査では、今のところ乳頭部の異常は見られないし、物が見えづらいとか頭痛がするなどの症状もないと言うので、ひとまず安心。
ところが困ったことにIさんはアレルギー体質で点眼薬が使えないのです。 そこで私はアワビの貝殻エキスを勧めました。
アワビの貝殻エキスの効果は、検査機関の分析、私の臨床調査も済んでいて詳しく解っていました。 体質や病状がアワビの貝殻エキスとぴったり合っていたのか、Iさんは結果が非常に早く出ると同時に改善の度合いが顕著でしたので、驚いたのは本人よりもむしろ私のほうでした。

飲み始めて2週間目の検査で眼圧は正常に戻り、活字やパソコン上の文字もはっきりと見えて疲れないというのです。 視力も最初に来院したときは0.6でしたが、0.8まで回復していました。
どういうわけか乱視症状もよくなり、見えづらかった視界がくっきりとしてきたというのです。 もちろんアレルギー反応も出ませんでした。
本人の喜びようは大きく、表情も声もガラリと変わって明るくなり、その後も月に1回の診察日には仕事の報告などを笑顔でしてくれます。 私は長く糖尿病を研究していましたが、糖尿病と目の病気が密接につながっているところから、やがて眼科にも関心を持つようになり、なかでも「緑内障」や「白内障」をはじめ、失明につながる病気の患者さんの苦悩は筆舌に尽くし難いものがあることを知りました。
それが現在眼科医になった大きな理由です。 なかでも中途失明の患者さんの苦悩の深さは測り知れません。
そうした患者さんの思いを少しでも解消したいとの思いで、従来の治療に加えて「何か目にいいものはないか」と探し求めてきた結果、得られたものがアワビの貝殻エキスでした。 「緑内障」や「白内障」の患者さんから、「先生、何か目にいいものはありませんか」と相談されたときに、迷わずアワビの貝殻エキスと即答できる優れたものです。
アワビの貝殻エキスの原料は、わが国最初の眼科専門書である『眼目名鑑』や古い中国の医学書に「石決明」の呼称でしばしば登場する生薬で、その正体はガイ科の貝の真珠層です。 なかでもアワビの殻からとったものは質がよいとされ、江戸時代には大流行した記録が残っています。
しかし、当時は今日のような高い抽出技術をもっていなかったので、貝殻を細かく砕いて粉末にしたものを飲んでいましたから、飲みにくいだけではなく、粗悪品も出回り、しだいに人々から忘れられてしまったのです。 日本人の変わり身の早さは、歴史をみるに枚挙の暇がありません。
太平洋戦争で敗北すると、それまで軍国主義を唱えていた人物が、一夜にして親米派の民主主義者になってしまった例は記憶に新しいところです。 同じようなことは、江戸末期に黒船がやってきて、明治維新を迎えたときにも起きました。

たとえば、政府が先頭を切って欧化政策を取って「断髪令」が発布されると、たちまちちょんまげ姿が街から消え、新聞紙上に「ザンギリ頭をたたいてみれば、文明開化の音がする」という俗謡が載ったり、廃仏毀釈運動が起こるや国宝・重要文化財級の仏像も建造物も野晒しにされたりしました。 中国数千年の歴史に学び、国内で熟成されてきたわが国の優れた伝統・伝承医学である漢方・蘭方もまた同じ運命を辿ります。
政府の欧化政策の波のなかで西洋医学が勃興し、明治8年に医師学術試験規則布告、翌年には医術開業試験が実施されました。 同16年には、医師免許規則で西洋医学を学ばないと医師になれないこととなり、さらに同28年の帝国議会の議決で漢方では医師免許を取れなくなりました。
この年は洋式軍隊で闘った日清戦争に勝ったために西洋化の流れはますます強調され、医学界も例外ではなく、その流れのなかにあったことは興味深いものがありますが、この年を境に漢方存続の動きは急速に衰えていったのです。 このことは、一面ではその後の医学の近代化と進歩につながったことは確かですが、同時に伝統医学の優れた点までが精査、斟酌されることなく切り捨てられることになりました。
ここで取り上げるアワビの貝殻エキスは、アワビの真珠層を粉末にした漢方処方ではなく、現代の抽出技術を駆使した新しい製法によるものです。 アワビの貝殻の抽出エキスの臨床調査をしてみると、不思議なことに「緑内障」の患者さんにも「白内障」の患者さんにも非常によい結果が出ています。 ここで不思議と書いてはいますが、実のところ私自身は少しも不思議とは思っていません。
それが本書を出版するきっかけになりました。 西洋医学的な見地からすれば「緑内障」と「白内障」とでは病因が異なるので、双方に効く薬があることは理屈に合いません。
しかし、眼球の働きや視神経を活性化して、視力の構造全体を若々しく蘇らせる物質と考えれば少しも不思議ではないのです。 根本的には病気を全体的にとらえようとする漢方と、部分的に診る西洋医学との差です。
ですから、病因の異なる「緑内障」にも「白内障」にも、そのほかの眼病治療の副剤としても、アワビの貝殻抽出エキスを飲んで改善したとしてもいっこうに不思議なことではなく、むしろそこにこそ漢方の妙味があると言えるのです。 事実、眼底出血、角膜炎、結膜炎などの症例でも改善が見られます。
その理由は、アワビの貝殻抽出エキスには、眼球の血流を改善し、炎症を鎮め、視神経を活性させる作用があるからではないかと考えています。 最近、その薬理の一端がわかってきましたが、私も強い関心をもって更に研究を続けていきます。

本来、インド発祥の「アーユルヴェーダ」の医学も、中国に始まる中医学・漢方医学も、伝統・伝承医学として素晴らしい知恵と技術をもっていたにもかかわらず、先述したように明治政府の偏頗なまでの「西洋文明の導入」政策によって埋没してしまったのです。 哲学であれ科学であれ、新しいものを求め続けることも大切ですが、しかし、昔のものを古いという理由だけで破棄してしまう行為には賛成できません。
確かに伝統医学のなかには迷信、俗説に類するものもないわけではありませんが、つぶさに研究していくと、現代医療に勝るとも劣らない実に優れた知恵や情報がキラ星のように存在していることもまた事実です。 現代人は、人知を尽くした古代医学、伝承医学のなかに、残され、蓄えられている珠玉を見つける知恵があってもいいのではないでしょうか。

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